猛暑の高松高裁に120人の控訴人・支援者らが集う

7月28日、14:30開催の第2回口頭弁論、並びに記者会見・報告集会についての詳報です。
当日は、四国全域に熱中症警戒アラートが発令されているなか、四国4県の控訴人・支援者が、高松高裁に詰めかけました。
香川の控訴人・支援者の皆さんは11時半には高裁前に集合して、高裁前の歩道を通りかかる人々や車道の車に向けて街宣行動。




12時には大型貸切バスで松山からの控訴人・支援者が到着。その後も列車、高速バス、自家用車で乗り合わせた人々が集まりだしました。38度を超える猛暑に、高裁敷地内の建物の陰で待機する人々も。


13時には参加者全員が高裁前の歩道に集合し、入廷送り出しのための隊列を作って、正門迄進みました。



送り出しが終わると、参加者は次々と高裁の手荷物検査を受けて、1階待合室で待機。ここで控訴人席に入る24人と優先傍聴席に入る12人に事務局から券が手渡されました。それ以外の人は隣室での裁判所の一般傍聴券抽選に参加し、そのうち63人が傍聴券を手に入れ、第1号法廷に向かいました。普段は刑事裁判用に使われる一番大きな法廷です。なお、傍聴券が手に入らなかった控訴人・支援者は弁護士会館で待機して頂きました。
法廷内の、当事者および代理人32人席には最前列に弁護士・意見陳述者、その後ろには原告381人を代表して裁判に臨む人たちがぎゅうぎゅう詰め状態で座りました。向かって右側席には四国電力関係者が詰めました。また、第1回目の口頭弁論の時と同様、傍聴席は満席となりました。
14時半に開廷となり、控訴人側の3人の訴訟代理人弁護士による、四電側の答弁書に対する反論が行われ、また八幡浜市在住の遠藤綾控訴人による意見陳述も行われました。
冒頭に、薦田弁護団長より、岡村眞・高知大学名誉教授に対する証人尋問の申請希望が出されました。2024年の能登半島地震を経て改めて高裁での証人尋問申請となりました。
法廷内のやりとりが傍聴席からは聞きづらく、傍聴人の一人から「マイクの音量を上げてほしい」との要望があり、裁判長が傍聴席に向かってそれまでの経緯を説明する場面もありました。
以下、事務局の文責で、法廷での陳述について紹介します。傍聴席からのメモ書きを基にしていますが、よく聞き取れなかった部分は「準備書面(1)(答弁書に対する反論)」の記述を参考にして書き起こしています。(薦田弁護士と遠藤綾控訴人の陳述は、PDF原稿を貼り付けています。また写真は報告集会時に撮影)
中野宏典弁護士、司法判断の在り方について3点に絞って陳述

中野弁護士は以下の3点に絞ってパワポを使って陳述した。
① 判断の枠組みに係る主張に対する反論
浜岡原発データ改ざん問題で、申請時にこの不正を見抜けずに許可した原子力規制委員会(原規委)の資質・能力の欠落が明らかになった。原規委は、中部電⼒の虚偽説明を⾒抜けず、過⼩な基準地震動について「おおむね了承」していた。今回の外部からの公益通報によるまで、不正を⾒抜けなかったという厳然たる事実は、本訴訟においても、判断の重要な前提として、認識されなければならない。
また、被控訴⼈は、原規委の策定する基準や審査について、くり返し「原規委がその付与された権限に基づいて策定した安全性の基準」とか、「原発の安全性に関する審査」などと述べているが、原規委の基準は安全性の基準ではなく、あくまでも「規制」基準である。原規委⾃⾝が、「基準さえ満たせば安全であるという誤解を呼ぶ」として「安全基準」から「規制基準」と名称を変更している。
② 原発に求められる安全の程度
原判決の考え方は、人格権侵害の具体的危険を『事故発生の高度の蓋然性』と捉え、事故発生の蓋然性は小さいのだから問題がないとしている。が、福島第一原発事故という歴史的事実がある。原発の安全とは、危険(リスク)を受任せざるを得ない被害が及ぶすべての人(潜在的被害者)にとって、リスクを受任せざるを得ないといえる限度にまで低減されているかという観点で捉えるべきである。
③ 主張立証責任に係る主張に対する反論
原発の安全性に関する専⾨技術的知⾒及び資料を持つ事業者に立証責任がある。周辺住⺠らはそのような専⾨技術的知⾒や資料を持ち合わせていない。
薦田伸夫弁護団長 控訴人ら準備書面(1)(地震)の要旨を陳述

薦田弁護士は、中部電力による浜岡原発の基準地震動に関するデータ捏造について、「基準地震動は、原発の耐震安全性に直結する極めて重要なものであり、中部電力の捏造が言語道断の許し難い違法行為であることはいうまでもない」とし、四国電力が犯した問題は、「悪質さの質が違うし、悪質さの程度において、中部電力よりも、四国電力の方が数段悪質であると言えるのではないか」と述べた。
また、中部電力は活断層の存在を認めたうえでのデータ捏造だったが、「四国電力は伊方1号炉の際には中央構造線を無視し、伊方2号炉、3号炉の時には中央構造線は活断層ではないとして、一貫して、活断層の存在自体を否定していたのである」と糾弾した。
そして、「原判決は、このような実態に目を瞑り、原子力規制委員会の許可を受けた原発は安全であるかのような安易な判断をしてしまった。いうまでもなく、裁判所の使命は基本的人権の擁護、弱者保護にある。裁判所が、中央構造線の地震による危険を直視した司法判断を示されることに大いに期待する」と述べて、陳述を終えた。
薦田伸夫弁護団長の陳述PDF資料 薦田弁護士控訴審準備書面(1)の要旨
中野弁護士 火山事象に係る安全の欠如について

中野弁護士は、「準備書面(1)答弁書に対する反論」の97頁にある小括、「平成25年⽕⼭ガイド策定時に、原規委・原規庁が、モニタリングによって巨⼤噴⽕の前兆現象を把握することができると誤認し、これに依拠して原発の安全を確保しようとしたことを⽰す証拠は枚挙に暇がない。これは、議事録や証⾔等から⼗分に認定できる事実認定であり、専⾨技術的裁量とは無関係に、裁判所が認定できる事実である。にもかかわらず、原判決は、この点を曖昧にしたまま、『令和元年⽕⼭ガイドは平成25年⽕⼭ガイドと内容に変更がない』という原規委の弁解を鵜呑みにし、平成25年⽕⼭ガイドの不合理性を直視せずに、令和元年⽕⼭ガイドが具体的審査基準であるかのようにごまかしたのであり、⼀⽚の合理性もない。こういった規制⾏政によるごまかしを裁判所が追認することこそ安全神話であり、本件原発で福島第⼀原発事故のような過酷事故が発⽣する原因となることを 肝に銘じなければならない」と、いくつかの具体例を述べて、火山ガイドが不合理であることを陳述した。
また火山の巨大噴火のポテンシャルを把握することは困難であり、「噴⽕が差し迫っているか、ポテンシャルがあるか否かの判断もなかなかできないのが実情」で、「安易に⼀部の専⾨家の⾒解に依拠して、⾮安全側の判断を⾏うべきではない」と陳述した。
大河陽子弁護士 避難計画に係る安全の欠如について

大河弁護士は、被控訴⼈が、「深層防護の考え⽅を⾻抜きにし、住⺠らの⽣命、⾝体の保護を蔑ろにする主張に終始」していると指摘し、「控訴⼈らによる避難計画の具体的な不備⽋落を指摘する主張に対して、被控訴⼈は制度論や抽象論に終始し、避難計画が本当に住⺠らの⽣命、健康を保護できるのか、実現可能性及び実現可能な体制を整備しているのかについて具体的な根拠を⽰して反論していない」とした。
その上で、裁判所に対して、「原⼦⼒発電所施設に係る主張に拘泥する被控訴⼈の主張に引きずられることなく、法がその⽣命、⾝体を保護することを⽬的とする住⺠の⽴場に軸⾜を置いて、『潜在的被害者にとって、危険(リスク)が受忍せざるを得ない限度にまで低減されている』といえるか否かを判断いただきたい」と、陳述を終えた。
控訴人遠藤綾さんの意見陳述

遠藤綾さんは、伊方町の東隣にある八幡浜市の市議会議員として、伊方原発で過酷事故が起きた時の住民避難計画についての問題点を指摘した。まず、伊方町の住民が、佐田岬半島の付け根にある伊方原発を避けて避難することの困難さを述べた。また八幡浜市民は市内全域に「屋内退避」指示が出され、伊方町の住民が最優先で避難したあとに段階的に避難することになるが、能登半島地震のような家屋の倒壊など起これば自宅待機は不可能。避難所も外気を遮断することは難しいとして、実効性の点で避難計画には問題が多いことを指摘した。
福島第一原発事故後に多発した福島県内の子どもの甲状腺がんについても言及し、国、県、東電が未だに原発事故との因果関係を認めない現実に、同様なことが八幡浜市の子ども達に起こるのではないかとの危惧を述べた。
そして、原判決の「放射性物質が発電所の外に放出される重大事故が起きるとは認められないので、避難計画に不備があっても、原告に生命及び身体に重大な被害が生じるとは言えない」との棄却理由に「非常に憤りを感じ」ると述べ、原発は人の手には負えないものであり、自然エネルギーを生かした安全な発電方法に切りかえて、原子力発電は直ちにやめるべきだとして陳述を終えた。
遠藤綾さん意見陳述PDF 260728遠藤綾さん意見陳述書
最後に、第3回口頭弁論期日が11月26日木曜日の14時半からとなるとの裁判長の発言があり、控訴審は終了しました。
記者会見・報告集会

閉廷後、裁判所に隣接する香川県弁護士会館に移動し、記者会見・報告集会を行いました。会場には報道陣を含め100人近くの参加がありました。
中川創太弁護団事務局長 控訴審の内容などを報告
1) 準備書面(1)(答弁書に対する反論)を行った。
準備書面(1) 答弁書に対する反論
2) 岡村眞・高知大学名誉教授を証人として申請した。
3) 今回も、各準備書面担当弁護士3人の陳述のほか、控訴人意見陳述も行った。被控訴人側弁護士 が、途中で裁判長に「45分が経過した」と牽制球をいれたが、裁判長が続行を認めた。
4) 第3回口頭弁論期日が当初予定の12月3日から11月26日(木)14時半からとなった。四電側が、今日の準備書面(1)に対する反論を行う予定。
5) 次回も今回同様に、是非とも大勢で傍聴してほしい。

記者会見
中野弁護士、薦田弁護士、大河弁護士、そして控訴人の遠藤綾さんが法廷での陳述の感想などを述べたあと、記者会見となりました。
1) 記者(愛媛新聞社)「浜岡のデータ捏造と伊方原発運転差止め訴訟をどのように結びつけるのか」
(中野弁護士)今までの裁判例は、規制委員会を過度に信頼し過ぎた内容となっている。原判決でも一番象徴的に表れているのは、規制委員会が作った規準は社会通念上の安全を具体化したものだとしていることだ。判決文の根っこのところに裁判所が規制委員会を信頼し過ぎていることが見え隠れしているが、それは違う。規制委員会がおかしなこと、間違ったことをするかもしれないという前提で、裁判所は厳格な審査をすべきだという意味合いで浜岡のデータ捏造を取り上げている。
2) 記者(毎日新聞社)「今回、初めての主張は浜岡原発データ捏造の他にもあるのか」
(中野弁護士)データ捏造以外としては、今年3月に論文発表があった「鬼界カルデラの大規模マグマだまり」の主張がある。
3) 記者(不明)「第1回口頭弁論では控訴人は381人だったが、今回も人数に変化はないか」
(中川弁護士)変化なし。

報告集会での参加者からの声
1) Aさん
傍聴席から、「声が小さくて傍聴席まで聞こえないので、マイクの音を大きくしてほしい」と発 言した者です。法廷内のやりとりが聞こえず、話の内容が分からないと、傍聴席で支援している意味もなくなってしまう。それと、陳述の際は、是非とも声を大きく、迫力のある口調でやってほしい。
(薦田弁護士)今まで傍聴席にも聞こえているものと思っていた。改めて、意識して取り組みたい。裁判所にも申し入れたい。
2)Bさん
最近、ジャーナリスト青木美希さんの「息吹き返す『原子力村』、再エネを妨害」という記事を読んだ。原子力ムラについて詳しく書いてあり、規制委員会はお飾りとのことに怒りがこみあげてくる。
スマホの緊急地震速報(アラーム)の音が響き、震度7の熊本地震発生
記者会見中の16時27分に、震度7を記録した熊本地震が発生。熊本から遠く離れた香川県高松市内のビルの5階会場でも数分間、長周期地震動のようなゆっくりとした揺れが続きました。
以上