原科幸彦さん講演会 「自然エネルギー100%社会を創る 地域資源の活用で日本再生」

  10月13日、千葉商科大学前学長の原科幸彦さんを迎えて、コムズ(松山市男女共同参画推進センター)大会議室にて表記の講演会を開催した。高知からの参加も含めて100人近くが講師の話に熱心に聞き入り、講演後の質疑応答も活発に交わされた。 

講師の原科幸彦さんのプロフィールは以下の通り。
 1946 年生まれ。小2 ~中1 まで松山に住む。東京工業大学理工学部卒。同大学院博士課程修了。マサチューセッツ工科大客員研究員、東工大教授などを経て、2012 年千葉商科大学政策情報学部教授、2017 年3 月~ 2025 年3 月まで同学長。国際影響評価学会(IAIA)会長、日本計画行政学会会長など歴任。著書に『環境アセスメントとは何かー対応から戦略へ』(岩波新書2011年)、『SDGsと大学ー自然エネルギー100%大学の挑戦ー』(千葉商科大学長プロジェクト2022 年)など。

 開会にあたって、須藤昭男事務局長は、14年前に故郷・福島で流れた血と涙を象徴する赤いネクタイと真珠のタイピンを身に着けて、「福島で起きた原発事故を決して忘れぬよう、今日もこの姿で挨拶をします。原科先生は、多感な幼少時を、松山の美しい自然の中で感動をもって過ごされ、それが結実して、50年も前から原発反対を貫かれているとお聞きします。私どもも伊方原発が廃炉になるまでご一緒に原発のない社会の実現に向けて頑張っていきましょう。」と挨拶を行った。

 続いて、檀上にあがった原科さんは、「誕生日が8月6日ということで、子供の頃より原爆に深い関心がありました。松山地裁の真ん前の自宅で少年時代の6年間を過ごし、都市の真ん中に豊かな自然がある文化都市のイメ―ジはそれ以来自分の中にあります。」と語り、現在、問題になっている明治神宮外苑の都市開発についても、都市の真ん中にある豊かな自然と歴史的文化遺産を壊す行為であり反対の立場だと付け加えた。

 講演の冒頭に、千葉商科大学が「実学と商業道徳の涵養」のために設立されたという歴史的な経過が説明された。原科さんは、東京工業大学を定年退職後に千葉商科大学の教員となると、「持続可能な環境エネルギー政策を考える」公開講座などを企画し、2014年には環境問題に理解のある前学長のもとで、教員有志の自主活動として自然エネルギー100%を目指したいとのプレスリリースを行った。2017年に学長になると、「まず、隗より始めよ」と「自然エネルギー100%大学」を目指す「学長プロジェクト」を立ち上げ、「商いの力で」社会を変えることを目指して、教職員、学生を巻き込んだ様々な活動を行い、2年後の2019年に、遂に大学の電力調達が自然エネルギー100%となった。原科さんは、エネルギ―自給が地域経済を豊かにするとして、地域分散型の国土形成を呼びかけているが、その一つの例が、千葉商科大学が成し遂げた「自然エネルギー100%大学」だと述べた。原科さんは更に、各大学での自然エネ採用の推進が必要だと考え、志を同じくする方々との協働を拡げる中、2021年には「自然エネルギー大学リーグ」が設立されるに至っている。

 講演の中で原科さんは、原発に対する考え方も述べられた。3.11原発事故の起こる11年も前の2000年に、朝日新聞の「論壇」に「時代に逆行する原発推進法案」を投稿し掲載されている。その後のマスコミ取材にも、日本は自然エネルギーが豊富で国内消費の何倍も賦存するので、その土地にあった自然エネルギーをミックスしてゆけばエネルギーを自給できるとしている。

原発がなくても電力が安定供給できることは、3.11事故のあと2013年9月から2015年9月の丸2年間、日本は全く原発なしで不自由なく過ごしたことが何よりの具体的な実績だとも強調した。一方、原発は地震が起これば最初に停めるし出力調整が難しいので、実は安定供給の電源ではない。後始末に掛かる莫大な費用を考えると、原発は「安くない(経済合理性がない)」、「安全でない」、「安定供給できない」の「3つの安」であることも指摘した。

 講演後の質疑応答では、講演についての各種の感想が述べられると共に、潮力発電の可能性や核融合発電への評価などにも質問が及んだ。太陽光パネルのリサイクル・処分法についての質問もあった。原科さんは、核融合については核分裂とは異なるものであるという学問的見地以上には言及しなかった。太陽光パネルのリサイクル処分については、核廃棄物の処分のような解決が極めて困難な問題とは異なり、大きく見れば家電製品の処分問題と同種の、解決可能な問題と見ていると述べた。

 講演後は沢山の質問が出て、30分用意した時間を超えて質疑が続いた。

 最後に、越智勇二事務局次長による挨拶があり、講演会は成功裏に閉会した。

*講演の様子については、以下のユーチューブ動画をご視聴ください。
                               https://youtu.be/DxzaQyUHC4s