3月9日、大津地裁で関西電力高浜原発3、4号機の運転を差し止める仮処分決定がなされたことについて、「伊方原発をとめる弁護団」と「伊方原発をとめる会」は、9日17時から愛媛県庁記者クラブで会見を行い、以下の「声明」を発表しました。
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2016年3月9日
伊方原発をとめる弁護団
伊方原発をとめる会
声明
1. 本日,大津地方裁判所は,関西電力高浜3号炉,4号炉について,運転停止を命じる仮処分決定をした。その理由は,①伊方最判を引用し,原子炉施設の安全性に関し,関電が依拠した根拠,資料等を明らかにすべきであり,その主張及び疎明が尽くされない場合には,関電の判断に不合理な点があることが事実上推認される。②原子力規制委員会が関電に設置変更許可を与えた事実のみによって関電の主張及び疎明があったとすることは出来ない。③福島原発事故の原因究明は,建屋内での調査が進んでおらず,今なお道半ばの状態であり,津波を主たる原因と特定してよいのかも不明であって,その災禍の甚大さに真摯に向き合い,二度と同様の事故発生を防ぐとの見地から安全確保対策を講ずるには原因究明を徹底的に行うことが不可欠であるが,この点についての関電の主張及び疎明はいまだ不十分な状態であるにもかかわらず,これに意を払わないで,関電ひいては原子力規制委員会がそのような姿勢であるならば,そもそも新規制基準策定に向かう姿勢は非常に不安を覚えるものと言わざるを得ない。④関電の保全段階における主張及び疎明の程度では,新規制基準及び本件原発にかかる設置変更許可が直ちに公共の安寧の基礎となることをためらわざるを得ない。⑤過酷事故対策のための電源設備等について,このような備えで十分であるとの社会一般の合意が形成されたといってよいか躊躇せざるを得ない。⑥使用済み燃料ピットの冷却設備もまた基本設計の安全性にかかわる重要な施設として安全性審査の対象となるべきものであるし,使用済み燃料ピットの崩壊時の対策について十分であると認めるに足りる資料は提出されていない。⑦耐震性能について,連動想定・長め想定をしたからといって安全余裕を取ったとはいえず,松田式が地震力のおおむね最大を与えるものであると認めるに十分な資料はなく,耐専式の与える応答スペクトルが予測される応答スペクトルの最大値に近いものであることを裏付けることができているのか疑問が残り,断層モデルにおいて前提とするパラメータが本件原発の敷地付近と全く同じであることを意味するとは考えられない,北海道留萌支庁南部地震の記録等に基づき策定した震源を特定せず策定する地震動についても十分な資料は提供されていない,⑧古文書に記載された大津波について,関電が行った津波堆積物調査等によって大規模な津波が発生したとは考えられないといってよいか疑問なしとしない,⑨福島原発事故を経験したわが国民は,事故発生時に影響の及ぶ範囲の圧倒的な広さとその避難に大きな混乱が生じたことを知悉しているが,安全確保対策としてその不安にこたえるためにも,地方公共団体個々によるよりは,国家主導での具体的で可視的な避難計画が早急に策定されることが必要であり,この避難計画をも視野に入れた幅広い規制基準が望まれる以上に,過酷事故を経た現時点においては,そのような基準を策定すべき信義則上の義務が国家には発生しているといってもよいが,この点について関電の主張及び疎明は尽くされていない,というものである。
そして,この決定は,稼働した原発の運転停止を初めて命じた画期的なものである。
2. 高浜3号炉,4号炉については,昨年4月14日,福井地方裁判所が同様に運転停止を命じる仮処分決定をしたが,同決定が,一昨年5月21日に大飯原発3号炉,4号炉の運転停止を命じたのと同じ樋口コートによる決定であったため,同決定が樋口コート特有の判断であるかのように論じられることがあったが,本日の決定により,そのような論旨は明確に否定された。
3. また,昨年12月24日,上記樋口コートの仮処分決定に対する異議審において,転勤した樋口裁判官らの後任となったいずれも最高裁事務総局を経験した異色の3人の裁判官が,仮処分決定を取り消し,申立を却下する決定を行ったが,本日の決定は,そのような最高裁シフトに動じないで裁判官の独立性を貫く姿勢を鮮明にした。
4. 何よりも,本日の決定の理由は普遍的なものであり,全国の原発訴訟に与える影響は極めて重大である。何となれば,本日の決定の上記①~⑨の理由中,⑧以外の理由は,全国の原発に共通するものだからである。
5. 伊方3号炉は,昨年7月15日,原子炉等設置変更許可を受け,現在工事計画認可の補正申請書を提出している段階にあるが,原子力規制委員会は,本日の決定を真摯に受け止め,新規制基準を根本から見直し,伊方3号炉についての審査をやり直すべきである。高浜4号炉は,原子炉等設置変更許可を受け,工事計画認可を受け,使用前検査を受けて再稼働に入った直後に原子炉が自動停止するという重大事故を起こして現在停止中であるが,伊方3号炉がその二の舞にならないよう,原子力規制委員会は,根本的な見直しをしなければならない。
6. また,県民や市民・町民の安全を確保すべき立場にある知事や立地周辺自治体の市長・町長は,本日の決定によって,新規制基準や避難計画に重大な問題があると指摘されたことを真摯に重く受け止め,伊方3号炉再稼働の同意を撤回し,再度その安全性について検討しなければならない。
7. 伊方原発については,1338名もの原告が,松山地方裁判所に運転停止を求めて本訴を提起しているが,提訴から4年以上経過し,審理は既に終盤を迎えている。本日の決定を受け,伊方原発についても早期に運転停止の判決を受け,伊方原発の再稼働を絶対に許さないことを改めて誓うものである。
以上