広島地裁も仮処分却下の決定 運転停止認めず とめる会は抗議の記者会見

10月26日、広島地裁は伊方原発3号機の運転差し止めを求める第2次仮処分について、住民の訴えを退ける不当な決定を下したため、当会は県庁記者クラブで弁護団とともに会見し、共同声明を発表しました。

決定は、差し止め要件を極めて狭く解釈することによって、言うなれば中身に踏み込ないままに門前払いをしたものでした。このため。裁判所が住民の不安や訴えに正面から応えるために審理を尽くす努力ではなく、原発推進の行政追随のため屁理屈づくりにいそしんだとしか思えない代物です。福島原発の事故の直後には、OBはもとより現役の裁判官からも「司法の責任では」の声も聞こえていましたが、今回の決定は原発事故などなかったかのようなズサンなものでした。

会見には薦田伸夫弁護団長、東翔弁護士、須藤昭男とめる会共同代表、松浦秀人事務局次長代行の4名で臨みました。なお、第2次仮処分とは、昨年12月の広島高裁異議審の決定による運転禁止期間が本年9月30日までとされていたため、10月1日以降も引き続いて運転禁止を求めるものです。この裁判では火山による過酷事故の危険(火砕流が到達する危険性と火山灰などの噴出物がもたらす機器損傷の危険性)が争点とされ、大地震による危険性についてはこの裁判では審理の対象外でした。

2018年10月26日

 

伊方3号炉広島地裁仮処分決定についての声明

 

伊方原発をとめる弁護団

伊方原発をとめる会

 

  1. 本日,広島地方裁判所民事第4部(藤澤孝彦裁判長,伊藤昌代裁判官,内村諭史裁判官)は,伊方原発3号機について,運転差止を求める仮処分の申立を却下した(以下「本決定」という)
  2. 本決定は,決定全文120頁中,裁判所の判断を示した箇所は僅か36頁に過ぎず,分量ばかりか,その内容も極めて乏しい,明らかな不当決定である。決定文中には,特段の事情がないのに本案訴訟とは別に仮処分の申立が繰り返されることは一般的には相当ではないと解されると記載されており,本件について,裁判官が,正面から,真剣に取り組んだとは到底認められない,ずさん極まりない決定である。
  3. 本決定は,本案判決が確定するまでの短期間に,巨大噴火が起きるリスクがあり,しかもその程度が著しい損害又は急迫の危険と評価される場合に限って差し止めが認められると判示しているが,これは,差止要件を極めて厳格に絞った異例の判断といわなければならない。また,広島高裁即時抗告審及び異議審において認定された火山ガイドの不合理性や原子力規制委員会の適合性判断の不合理性についての判断から逃げてしまい,これらの不合理性を不問に付している。その上,巨大噴火の可能性を認めながら,しかも,巨大噴火の時期,規模を的確に予測することが困難であることを認めながら,巨大噴火の可能性は非常に低いとして,債権者らに著しい損害又は急迫の危険と評価される程度の人格権侵害をもたらすものとはいえないとしたものであって,基本的人権を擁護すべき裁判所が,その使命を放棄したものといわざるを得ない。
  4. 福島原発事故の悲劇がなかったかのような決定であり,福島原発事故を防ぐことができなかった司法の責任を忘れてしまった許し難い決定である。
    私達は,このような決定を断じて許すことは出来ない。
  5. 本決定は,火山だけが争点となった事件での決定であり,地震等は争点となっていない。
  6. 伊方原発は,我が国最大の活断層である中央構造線を無視して建設された原発である。伊方1号炉は,中央構造線の存在を無視して建設され,伊方2,3号炉は,中央構造線が活断層ではないとして建設された。「大きな事故の誘因」がないことを立地条件とする立地審査指針により,本来設置が許可される筈のない伊方原発が,中央構造線の存在を無視し活動性を否定することによって許可されてしまったのである。そして,その後,中央構造線が我が国最大の活断層であることが明確になったにもかかわらず,今度は,原子力規制委員会によって立地審査指針が無視されて,再稼働が許可されてしまった。本来地震国である我が国に原発を建設すること自体が間違っているが,想定東海地震の震源域の中央に建設された浜岡原発同様に,伊方原発は,中央構造線の直近に位置すると同時に南海トラフの巨大地震の震源域にも位置しており,地震による危険性は全国でも飛び抜けた危険極まりない原発なのである。しかも,事故が発生した場合には,佐田岬の半島側に居住する約5000人もの人々が避難出来ないことも常識となっていると言って過言ではないし,閉鎖性水域である瀬戸内海が死の海になることは必定なのである。
  7. 高松高裁では,火山だけでなく,地震とりわけ中央構造線の地震が重大な争点となって専門家2名の参考人審尋も行い,本年7月18日に既に審理が終結し,決定を待つだけの状態となっている。
  8. 私達は,日本にはその名に値する司法が未だ健在であると信じており,本日の地裁決定を覆す高松高裁決定が近日中に出ることを信じて疑わない。
    四国電力は,明日の再稼働を目指して準備中とのことであるが,高松高裁決定により,その再稼働が頓挫することを覚悟すべきである。

以上

            181026 とめる弁護団とめる会声明(広島地裁2次仮処分決定)