木村真三さんから届いたコメント

 新型コロナウイルス問題で急きょ中止した3月7日の講演会の講師・木村真三さんから、このほどコメントが届いたので、下記に紹介します。なお、見出しは、「とめる会」にて付しました。

 木村さんは獨協医科大学准教授。福島県にお住まい(鬼北町出身)で、愛媛新聞に「県人放射線衛生学者による福島通信」を連載中です。


3月7日、 NHKラジオ第一で
15時5分から私も話しますと
木村真三さん
「NHK 東日本大震災 音声アーカイブス〜あれから、そして未来へ〜」
衛生学と新型コロナウイルス

 私は「衛生学」という学問を学びました。「衛生学」とは医学の立場から、個人や集団の健康の維持・増進、疾病予防などを行うことを目的とした学問です。

 その中でも私は放射線から人を守るという放射線衛生学を専門にしているのですが、これまでカザフスタンのアラル海沿岸地域における小児腎障害の原因究明や働く人々の疾病研究など様々な経験をしてきました。

 今回の新型コロナウイルスは、2つのタイプが存在することがわかってきました。そのうち一つは、全体の7割を占めており、感染力が強いそうです。なぜ、新型コロナウイルスが危険なのかというと私たちが一度も出会ったことのないウイルスのため終生免疫ができていないからです。終生免疫とは、一度、身体の中にウイルスに対する抗体ができると、その後は免疫システムが働くため、生涯その病気にかかることがないというものです。

 SARS(重症急性呼吸器症候群)はコロナウイルスの一種ですが、こちらは一度感染すると終生免疫ができるそうです。その代わり、感染すると10~20%の方が呼吸不全などで重症化し、全体の致死率は9.6%(WHOが集団発生終息後に発表)となります。

やむを得ない中止だが、危機感も

 残念ですが、今回の講演会やその後のデモ行進に参加される方々は年齢層が比較的高い方が多いため、万が一感染した場合責任問題に発展するため、予防的措置をとることは必然となるでしょう。したがって、今回のことは致し方なしというのが私の意見です。

 しかし、こうした騒ぎで東日本大震災や原発事故の扱いが小さくなり、忘れ去られてしまうことに強い危機感を感じています。

 安倍首相はオリンピック・パラリンピック(オリ・パラ)を成功させたいために全国の小学校・中学校・高等学校・特別支援学校の臨時休校要請を出しました。

 この対策を福島の原発事故の時に講じていたらと、悔やんでも悔やみ切れません。米政府は日本にいる米国民に対し、50マイル(約80キロ)離れるように勧告したのです。

 オリ・パラに沸く首都圏の電力は福島から送られていたということをどれだけの方が考えてくれているのでしょうか。選手には申し訳ありませんが、商業主義のオリ・パラなど中止でも良いと思います。もし、仮に対策が功を奏し、新型コロナウイルスの流行を水際で抑えられたとして、オリ・パラで世界中から人々が押し寄せてきたら、やはり国内で大流行するのではないでしょうか。その時、政府はどのような言い訳をするのでしょう。

37日は講演の代わりにラジオ番組で

 ちょうど講演予定でした3月7日15時5分から55分まで「NHK 東日本大震災 音声アーカイブス〜あれから、そして未来へ〜」がラジオ第一放送(らじるらじるでは、R1)で放送されます。今回出演された飯舘村の人々は私の友人・知人です。裏話ですが、私が同行して取材に当たりました。今回は私の大切な友人たちの声をできるだけ忠実に伝えるため、私は控えめに解説しました。これを講演に代えさせていただきます。

2020年3月5日

木村真三