1/13に知事あて申し入れ=「欺瞞」を批判し再稼働同意の撤回を求めました=

160113mousiirekazo1月13日、伊方原発をとめる会は、愛媛県知事に対し「知事説明の欺瞞を許さず、『再稼働同意』の取り消しを求める申し入れ」を行いました。
中村知事は、昨年10月26日に伊方原発の「再稼働同意」を行うにあたって、「「知事説明の全文2ページ」」を新聞に掲載し、ホームページには「絶対に過酷事故を起こさせないとの決意」を記しています。その内容は、「欺瞞」に満ちており、深刻重大な原発事故を防ぐものとはなっておらず、また住民防護と避難対策もきわめて不十分なままです。
知事の欺瞞を打ち砕き、ただちに、再稼働同意を取り消すよう申し入れたものです。今回示した6点は、以下の通り。

第1に、知事は伊方原発の地盤に関して「岩盤が強い」と記していますが、これは“欺瞞”です。地滑りの危険に「余裕がない」ことが四電資料からも読み取れます。強い地震動で原子炉建屋等の地滑りは避けられません。
【理由】三波川帯における岩石は“もろい”性質があるのであり、佐田岬半島の各所を地滑り地帯として愛媛県が指定していることにも矛盾しています。2015年3月の四国電力による「原子炉建屋等の基礎地盤及び周辺斜面の安定性評価について」に示された650ガル時点でのすべり安全率は、原子炉建屋で1.8(要1.5以上)、周辺で1.3(要1.2)しかない部分が存在します。1000ガルにもならない地震動で基準を満たさなくなることが必定です。(四国電力「原子炉建屋等の基礎地盤及び周辺斜面の安定性評価について」から4ページ )
しかも、伊方原発1号炉訴訟(1973~)の際、裁判所の求めで作成された生越忠(おごせすなお)氏による鑑定書は「地盤の浅い部分よりも深いところで強度の低い部分がある」、「構成する岩石の性質が不均質」と指摘し、当時の原子炉安全専門審査会が原発敷地の「基盤は一様で堅硬な状態にある」とした審査結果を否定していました。ところが、突然の裁判長交代で鑑定書が生かされなかった経緯があります。抜本的見直しのないまま、「一様に堅硬」との評価が今日まで継続していることは重大です。(異議申立での生越鑑定書に関する部分4ページ 異議申立での生越鑑定書など引用

第2に、知事が「おおむね1000ガルに対応」と言うのは、まさに“誇大広告”です。
1000ガル程度の目標で「絶対に過酷事故を起こさせない」ことはできません。1000ガルを超え2000ガルに至るような強い地震の揺れに耐えられません。
【理由】あたかも基準地震動を1000ガルに設定したかのような印象をふりまいていますが、四国電力がおおむね1000ガルに対応とする資料は、あくまで「おおむね」としか言えないものです。近年、国内で発生する地震の揺れは強くなっています。国内では最大で4022ガルを記録しており、どう少なく見ても2000ガルに及ぶ揺れは現実の脅威とみなすべきです。その場合、伊方原発3号機の破壊が始まることは避けられません。
また、伊方3号機で破壊が始まる境目の値(クリフエッジ)は855ガルから変更されておらず、問い合わせても示そうとしません。明らかにすることが不都合であるからに他なりません。

第3に、知事は自然エネルギーの技術ではエネルギー転換が「非常に難しい」と、“ごまかし”ています。
【理由】原発が動いていなくても、電力不足はありません。知事はドイツの太陽光発電を失敗例のように語って自然エネルギーが限界ありとねじ曲げています。しかし、ドイツの自然エネルギーは2014年で全ネルギーの27.3%に達し、スペインはもっと伸びています。
日本国内でも、原発がほとんど動いていなかった2013年集計でCO2の発生は減少できています。火力をコンバインドサイクル等に改善しつつ、自然エネルギーを急速に増やすべきです。水力・風力・太陽光・バイオマスなど自然エネルギーの条件豊富な四国で前向きに挑戦すべきです。太陽光発電所にちょっと手をつけて、後は手を抜き、原発に回帰する知事の態度は全くの「ごまかし」です。

第4に、知事は、津波問題や電源問題、制御棒が入らない危険などを“過小評価”しています。
【理由】津波の高さが最大で8m程だとして被害はあり得ないように語っていますが、津波で海水による冷却がダウンし、それが事故を拡大深刻化させる可能性があります。冷却の電力を主要な火力、水力発電所から伊方までつなぐには長距離の送電が必要です。巨大地震の際に「深層崩壊」しやすい四国の山並み(四国羅針盤2013が指摘)は、至る所で鉄塔倒壊や断線の起こる可能性があり、亀浦変電所に届く以前に断線する可能性があります。
活断層があまりに近くて制御棒が間に合わない危険も無視しています。その熱量は、制御棒が入った場合の約14倍です。伊方原発の回り360度全てに人が住んでいることも、福島以上に深刻です。

第5に、知事の態度は“住民無視”です。原発再稼働推進に偏った人物を委員会に重用し、再稼働反対あるいは公開討論会を求める住民署名を無視しました。
【理由】県民多数は原発再稼働に反対であることが、各種アンケートでも明らかです。露骨な再稼働推進論者を原子力安全専門部会の委員に加え、是正を求める住民の再三の要請を無視しました。
2012年~14年、再稼働反対で知事に提出した26万1136筆の署名、2015年の公開討論会の開催要求署名13万1455筆の計39万余の署名を無視しました。
八幡浜市が議会と住民の意見を踏まえて同意したとの認識も誤りです。住民投票条例が請求され有権者のおよそ3分の1にまで請求書名が広がったことからも明らかです。

第6に、知事の“責任逃れ”と、住民防護“欠落”と、“空疎な”避難計画です。
【理由】「国の責任」、「首相の言質」と言いますが、福島県民を切り捨てようとしている国に責任を取らせようというのは、知事の「責任逃れ」であり、県民を欺くものです。
原発事故では、住民を放射能から防護することに全力を注がねばなりませんが、知事の「説明」にも、11月の国・県の総合防災訓練にもこの観点が「欠落」しています。
「避難計画」は、机上の空論です。原発事故では、仕事も学ぶ場も、住まいも長期にわたって移転しなくてはなりませんが、そのような避難先が用意できていませんし、できないのが実態です。まさに「空疎な」避難計画です。
「絶対に過酷事故を起こさせない」ためには、無責任な「再稼働同意」を撤回するほかありません。
以上