=伊方原発3号機「審査書」は、クリフエッジ(これを超えると破壊に至る限界)を超えることが明らかになるデータを使わない。原子力規制委員会に指摘してもこれを回避しており不当である=
長沢啓行大阪府立大学名誉教授は、「伊方3号の審査書確定を受けて」の中で、このことを指摘している。その内容を要約したのが以下の3点である。
(写真は長沢氏が室長を務める若狭ネットのホームページ画面と2013年に来県して講演した写真によるコラージュ)
① 伊方3号機「審査書」は、日本電気協会による設計用地震動評価手法(耐専スペクトル)を敷地前面海域の断層群(54kmおよび69kmの鉛直基本ケース)に適用していない。また、耐専スペクトルは地震データの平均像を与えるものであり、最近20年間の地震データも反映されていない。現在の耐専スペクトルを適用するとともに、最新の地震データを取り入れて耐専スペクトルそのものを改定し、かつデータの偶然変動(約2倍)を考慮すべきである。そうすると伊方3号機のクリフエッジ(これを超えると破壊に至る限界)を超えてしまうことが必定であるが、原子力規制委員会は、その現実を見ようとしていない。
② 「震源を特定せず策定する地震動」で用いられている「2004年北海道留萌支庁南部地震」のデータは、地震計設置箇所が限られているため、地震観測記録の不足が明らかである。これを補った(財)地域地盤環境研究所の解析結果(周辺に地震計が設置されていれば得られたであろう地震観測記録の解析結果)が公表されているのに、原子力規制委員会は、実際の記録ではないからという理由で、それを用いない。観測記録の不足を補った解析結果を用いると、伊方3号機のクリフエッジを超え、耐震安全性が保証されなくなるからだ。これは福島の教訓をふまえていない。
③ 断層震源モデルを用いた手法による評価において、断層幅と応力降下量は一体の関係にある。同じ地震エネルギーがより狭い断層面から発生する場合には、より大きな地震動が震源断層で生じると考えられる。ところが、断層幅が小さいにもかかわらず、発生する地震動の大きさに対応する平均応力降下量を、断層幅のより大きな断層に対して得られた値に基づいて小さく据え置いた四国電力の地震動評価は、明らかに過小評価である。このことを具体的に指摘したにもかかわらず、原子力規制委員会は無視しており、平均応力降下量算出の原論文を理解しているのかも疑わしい。このような「審査」でいいのだろうか?
(出典:長沢啓行大阪府立大学名誉教授「伊方3号の審査書確定を受けて」
http://wakasa-net.sakura.ne.jp/www/?p=517)