第15回口頭弁論で準備書面と原告意見陳述

dai15benronkousin1月19日に、伊方原発運転差止訴訟の第15回口頭弁論が松山地裁で行われました。
この日、弁護団は準備書面56、57を陳述しました。準備書面56では、「被災主要3県の直接死と震災関連死の死者数の比較」など示して、①震災に伴う原発事故が多数の住民の命を奪うものであり、万が一にも発生させてはならいこと、②深層防護を徹底することは不可欠であり、第4層、第5層に不備のある原発を再稼働することは許されないことを主張しました。(左の表をクリックで大きくなります)shomen56hyou2
準備書面57は、水素爆轟の危険を指摘した滝谷紘一さんの意見書への四国電力の反論に対し、弁護団がさらに反論を行ったものです。水中での溶融炉心・コンクリート相互作用が「一般的に発生しない」とする四電主張の誤りを指摘。また、設置変更許可申請書にイグナイタ(水素を減らすために点火して燃やす装置)の「効果は期待しないものとする」文面のある一方で、100%のジルコニウムと水が反応する場合の評価にはイグナイタの評価を見込むという矛盾を明らかにしました。炉心溶融を引き起こした際に、規制値である水素濃度13%を超えて、14.5%となり、激しい水素爆発(爆轟という)の恐れが否定できないのであり、四電の反論が当を得ていないことを指摘しました。

160119matsuokyoko原告の意見陳述では、松山市の松尾京子さんが、自らが原発問題に関わってきた経過を語りました。(写真は報告集会にて)
松尾京子さんは、第2子を妊娠したことが明らかになったその晩、チェルノヴィリ事故が子ども達に及ぼす影響と不安と怒りと悲しみを綴った「まだまにあうのなら」と言う書物を読みました。これが原発問題を考え始めるきっかけでした。茨城県のつくば市から松山市に移ってからも、原発をなくそうと取り組む人たちとの共同が続きました。
福島原発事故の起こった2011年3月11日深夜、東京に住む長男にようやく電話がつながり、原発をとめられなかったことを謝ると、当時25歳の長男が「お母さん、それはこれからの僕たちの責任でもあるんだよ」と語ったそうです。原発は危険だが「原発は必要悪」と語っていた夫も、福島原発事故の後、「不必要悪だ!」と明言するようになったとのこと。
伊方原発の再稼働をねらう動きについて、自身の体験をもとに語りました。県議会を傍聴した時のこと。「安倍首相の言質を取った」という職員の報告に議場がざわつき、再稼働容認にひた走った県議会の様子が語られました。三崎港で原子力防災訓練をチェックした時のことも。知事と副大臣がゆっくりと到着して自衛艦に乗り込む。その間、人々には放射能を防ぐための合羽もマスクも支給されず、津波との複合災害は考慮されていませんでした。陳述の最後に松尾さんは、「子孫から借りている土地」に対して、今生きている全ての大人は責任を負っている」とのアメリカンネイティブのホピ族の言葉も引用しつつ、裁判官に伊方原発の運転差止の判決を求めました。

160119mikamoto三家本(みかもと)美登里さんは、自宅の2階から伊方原発が見えるという、山口県上関町の住民です。「地元の上関に原発をつくらせてはならないのはもちろんのこと、伊方原発の再稼働もあってはならない!」と原告に加わったと言います。(写真は報告集会にて)
三家本さんは理由を3つ語りました。一つは、「核被害」の問題です。広島に生まれ育ち、山口に移り住んで、被ばく体験継承のためのビデオ記録作成に携わりました。その経験と、チェルノヴィリの少女が「何歳まで生きられるのだろう?結婚はできないだろう」と語ったことが重なると言います。二つには、伊方原発問題は上関の町民のいのちと暮らしに関わることだからです。三家本さんの住む上関町室津地区は、伊方原発から40㎞です。町には、伊方から30㎞の八島、45kmの祝島という離島もあります。2012年6月には、愛媛県知事にあてて再稼働を認めないよう求める上関町民の署名636筆を提出しました。三つめには、上関や周辺の生態系が世界遺産に匹敵する貴重な価値をもつことです。上関の自然を守る会の代表を務め、日本生態学会や日本鳥学会とも研究面を含め親交を深めています。上関には、国の天然記念物であるカンムリウミスズメが1年を通して生息しています。世界でたった1個体しか見つかっていない「ナガシマツボ」という貝など、環境省が絶滅危惧種と指定した42種類の貝類が上関の海域で確認されています。この「奇跡の海」を未来の子ども達に遺すために日々活動しています。三家本さんは、「伊方原発の運転を差止める判決を下して頂きますよう、切に願うものです」と締めくくりました。