第37回口頭弁論報告 

今回の証人尋問も、原告側が圧倒     またも四電側は人選ミスか

香川から応援の尾崎ご兄弟が高々と掲げる横断幕をくぐってイザ裁判所へ
一般傍聴券の獲得はまさに狭き門!
「理性と良識が原発を止める」「〇原発廃棄 ✖原発回帰」と車道に向かってもアピール

 伊方原発運転差止訴訟第37回口頭弁論が、10月10日、松山地方裁判所31号法廷で行われました。36席の傍聴券を求めて108人が抽選の列に並びました。

 今回も香川から駆けつけてくださった尾崎宗璋さん・憲正さんご兄弟制作による大きなバルーンや大小の横断幕、のぼり旗が裁判所前の歩道に飾られ、原告や支援者らは大いに励まされるとともに、市民への力強いアピールとなりました。入廷行進で使われる先頭幕も尾崎ご兄弟からの寄贈です。

 裁判は10時に開廷、地元の薦田伸夫弁護団長、中川創太弁護団事務局長、東翔弁護士、今川正章弁護士のほか、山梨から中野宏典弁護士、広島から定者吉人弁護士の6人の代理人と原告18人が原告席に座りました。

 原告側証人として、巽好幸神戸大学名誉教授(地球科学、マグマ学)、被告側証人として、奥村晃史広島大学特任教授(地震地質学)が出廷しました。 

 前回までと違い、今回は、午前中に2人の証人の主尋問を続けて行い、昼休憩をはさんで、それぞれへの反対尋問、再尋問、裁判官からの補充尋問が行われました。

 原告側の巽証人への主尋問

  法廷内にプロジェクター2台を設置して、画像を映し出した上で、東弁護士、中野弁護士が行いました。お二人は前日夜中まで綿密に打ち合わせをし、尋問に備えたそうですが、それに対して巽証人は、専門知識の無い裁判官や原告ら素人にも理解できるように配慮され、かみ砕いて丁寧に説明をされました。さらにお二人の弁護士が、難しい噴火のメカニズム、火砕流が海を渡る仕組みについてもわかりやすいたとえを用いて質問をし証人に確認しました。

 そうして巽証人は、現代の科学では、超巨大でも大規模でも噴火予測は困難、原発の運用期間中に破局的噴火の可能性がないと評価するのは困難、危険値の大きい災害に対しては通常よりも保守的な想定をすべきであり、破局的噴火の可能性が十分に低いとする四電評価は合理的でない、破局的噴火によるリスクは社会通念上許容される水準であるというのは、明らかに不合理である、などの証言をしました。

被告四電側の奥村証人

 伊方原発沖の中央構造線断層帯について、原発のある南側に傾斜していて地震動が大きくなる恐れがあるとの原告側主張に対し、「断層帯全域を見ても、南側傾斜の科学的データや知見は認められない」。四国電力の地震動評価は「妥当」であり問題はない。伊方沖は十分な調査がなされている、3次元探査の必要はないと、四電の主張を全面的に擁護しました。

 いろいろと工夫を凝らしてわかりやすい説明を試みた原告側に比べて、被告側の不誠実さ、不親切さが際だった証人尋問でした。

午後からの反対尋問

 学術論争で難しかった午前中の主尋問から一転して、午後からの反対尋問は、俄然面白いものになりました。

 巽証人への反対尋問では、7月5日に、先行している同種の訴訟の広島地裁でも証人尋問を終えられていて、被告側代理人は、そこでの調書を元にした質問が多く、原告や傍聴人にとっては分かりづらいところがありましたが、巽証人は終始、前を向き、毅然とした態度で答えていました。

 奥村証人への反対尋問では、薦田弁護士の厳しい質問が続き、証人が答えに窮する場面も多く、科学者、学者としての誠実さや良心が感じられない、その資質が疑問視される内容になりました。陳述書の内容や引用されている図表について、突っ込んだ質問をされると、「知らなかった」「それは専門外だから分からないので答えられない」。四電の提供資料をそのまま貼り付けて、合理的である、妥当性がある、と言っているかのようでした。

 伊方3号炉の「設置許可申請書」を参考文献にあげておきながら、「読んではいない」、孫引きだと認めるのです。伊方原発に直接足を運んで、現地を見て調査をしたわけでもないようです。

 さらに薦田弁護士は、奥村証人がかつて出席したいくつかのシンポジウム、講演会などでの発言を取り上げ、間違いないかと尋ねました。

 証人は、「国家基本問題研究所」(理事長・櫻井よしこ)の原発問題研究会で講演し、原発推進派の立場から、活断層について原子力規制委員会の対応の仕方を強く批判していました。さらに、「北海道エナジートーク21」(代表・廣田恭一・北海道商工会議所連合会 専務理事、前身は「原子力発電推進道民会議」)でのシンポジウムにパネリストとして度々登場し、新規制基準を厳しすぎると批判していました。

 奥村証人はだんだんと小さな声になり、「講演録があるのなら言ったのでしょうね」と、認めるしかありませんでした。奥村証人が原発推進派の「御用学者」であることが暴露されたのです。

 これに対して四電側代理人の田代健弁護士は、陳述書から内容が離れている質問だと再々異議を申し立てたのですが、菊池浩也裁判長は証人の一般的信用性の確認だとして、異議は認めず、薦田弁護士は最後まで質問を続けました。

朝10時から午後4時過ぎまでの長い一日を弁護団と原告、傍聴者で締め括ります

 裁判後、朝の入廷行進の集合場所で短い集会を行いました。今回は、出廷された6人の弁護士全員が参加されて、それぞれに発言されました。頼もしい弁護士さんたちの奮闘、活躍で、参加者たちは、裁判の内容で、こちら側に有利な展開になっていることが実感でき、勝利を信じて明るく会を締めくくることができました。

 なお、今回の裁判で用いられた巽証人、奥村証人の陳述書等は追って本HPで公開予定です。

皆さんお疲れさまでした!

今後の予定

 次回、第38回口頭弁論期日は、11月21日(火)13:15 開廷。被告側の中川 俊一さん(四国電力社員、安全対策)の証人尋問が行われます。

 次々回、第39回口頭弁論期日は、12月12日(火)10:00 開廷。原告側の野津 厚さん(国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所、港湾空港技術研究所)と佐藤 暁さん(原子力情報コンサルタント)の証人尋問を予定しています。

 私たちの松山地裁での裁判はいよいよ大詰めに来ました。来年6月半ばには結審の予定です。ぜひ、ご都合をつけて傍聴にお越しください。

<傍聴席からの感想>

Aさん: 原告側証人の巽さんはナイス。素敵でした。被告側の奥村証人は酷すぎる。自分が書いたというものさえ説明できない、卒論ならアウト。お粗末すぎる、下劣。

Bさん: 前半は難しかった、反対尋問になると奥村証人がボロボロになっていった。巽証人は揚げ足もとられず正々堂々としていた。

Cさん: 向こうとこちらの違いがくっきり鮮やかに。相手方は、余りにお粗末。自分で書いていないとしか思えない。薦田・中川弁護士のナイス・コンビとの対比。巽証人は堂々としていて自信に溢れ、反対尋問も、ただこちらの主張をなぞるだけのお粗末さ。被告側の弁護士の手抜きは酷い、向こうのひどさを痛感した。

Dさん: 専門的なところは分かりにくかった。正断層か逆断層の論争がわかりにくかったし、3次元探査についても相手方が逃げているのは分かったが、詳しくはわからなかった。 奥村証言の最後に(反対尋問で)、原発推進派の正体の暴露は面白かった。巽証言のマグマだまりなどは、よくわかった。

Eさん: 奥村証人=典型的な御用学者 福島の悲劇を目にしてよくあんなことが言えるものだと唖然とした。巽証人への向こうの反対尋問はやる気も意欲もなかった。

Fさん: 中野・東の若手弁護士もベスト・コンビ。薦田先生には敬服(よく調査された)。 奥村証人=鉄面皮の人物。冷静を装ってはいたが、「知らない」を繰り返して気まずかったろう。

Gさん: 一番心に残ったのは、発生確率の大きさより、起こる結果の大小を見て対応を考えるべきだと言われた巽証言。裁判官もこの言葉を受けとめて貰いたい。

Hさん: 被告側証人は可哀そう。というのも根拠のないことが暴露されていくから。巽証言の「判らないことを起こらないこととの区別を」は重要と思った。被告側の弁護士のやる気の無さ、意欲の無さは酷い。証人も、自分で書いていないことがバレバレでこれまた酷い。

Iさん: あの状況で奥村証人が穏やかにしゃべることが、羨ましかった。巽証人は、簡にして要を得た証言で、明解だった。若い弁護士コンビは、見ていて良かった。

Jさん: 南北の圧縮か引っ張り合いか、岡村眞先生は横ズレを基本にした逆断層(南が上がり北が沈む)と認定し、それが学会のほぼ共通認識。しかし、南斜面では原発に近づいてくるので地震の影響が大きくなるため四電はこれを否定。そのための奥村証人。また中央構造線を細切れに寸断して、地震のエネルギーが小さいかのように描くのが四電の手法。150kmが一斉に動けば甚大な影響で、四電はそれを打ち消したい。 「5000億円もかけた施設だから動かそう」は、安全と無縁の発想で、櫻井よしことのズブズブ関係などの暴露も、裁判官にも伝わるところがあったように思う。裁判官の質問もしっかり書面を読み込んでいることが窺えて、判決に期待したい気持ちがある。

Kさん: 奥村証言を聞いていて、こっちとの違いを感じた。事故や災害で多少の犠牲が出るのはやむを得ないという考え方で安全審査に臨んでいることに不安を感じた。巽証人の「判らないことは調査すべきだ」という発言は、その通りだと思った。

Lさん: 面白かった。巽さんは身長が193cmもあると帰宅後にネットを調べて知った。火山やマグマの話は初めて聞いたが、面白かった。奥村証人の証言内容はスカスカで、薦田先生の最後の尋問で信用性もガタ落ち。二人とも学者だが、片や『サイエンス』に掲載論文が多数で、もう片方は孫引きの類ばかり。鮮やかに質の違いが表れていた。

Mさん: 初めて原告席に座って、証人の顔を間近で見られてとても良かった。特に薦田弁護士の反対尋問の時、(奥村証人の)瞼がせわしなく動いて、?をついているのがよく分かった。ぜひ多くの人に裁判所に来てもらいたいと思った。また、奥村証人については、ウルトラ右翼の櫻井よしこ氏との関係や、原発立地県での推進派としての活動などを薦田弁護士に暴露され、まともな学者じゃないなぁと思った。各地での奥村証人の発言などを細かく調査したことに、驚いた。

Nさん :      主尋問での証人側作成資料の違い。  巽証人資料は非常にビジュアル、且つプロジェクターによる投影にて「分からせよう!わかって欲しい」という姿勢が鮮明。      一方、奥村証人資料は文章が中心で図解資料もあるが、素人が見て意味不明。最後に「四国電力の活断層調査・評価は地震本部の評価(第二版)を踏まえても適切なものであることについて、裁判所の方々に正確にご理解頂く上で、本陳述書が一助となることを期待したい」と締め括っている。午後の原告側反対尋問(薦田弁護士)にて、十分に答えられない部分もあり、「この資料はご自分で作られたのですか?」との意見も。 巽証人への被告側反対尋問は、主に広島地裁での答弁に対する尋問に終始。「マグマだまりがあると確定できるか?」「イエローストーンでの観測は確定しているか?」「巨大噴火が100年に1%、差し迫っているとする根拠はあるか?」等々。巽証人は、現在の調査方法の限界などにも触れ、「分からない事と、起こらない事は意味が違う!」とピシャリ。現在、地球のあらゆる変動に明確に応えられる科学的根拠は非常に乏しい現状で、過去のデータのみで「あと〇〇年は起こらない。この場所では起こらない」とする根拠は全く無い。それこそが科学的常識と捉えるべきである。その点から奥村証人資料の締め括りがいかに「原発ありき」の文章であり、恥ずかしさが無いのかと。 さらに、奥村証人への反対尋問で「東日本大震災をどう思われますか?」「日本の原発について調査されていますか?」などの尋問に被告側弁護士が「それは伊方に関係ない」などと苛立つ場面もあり、裁判官に制止される一幕もありました。次回以降ますます重要になってくるように感じました。