伊方原発運転差止訴訟 第30回口頭弁論・報告集会

口頭弁論も30回目を迎えました。今回も粛々と裁判所に向かいます。

 9月28日14時半より松山地方裁判所にて第30回口頭弁論が行われた。コロナ禍の席数制限解除で、原告席には32名が入廷し、原告側弁護士の準備書面の要旨陳述、火山についてのプレゼンテーション、二人の原告の意見陳述が行われた。次回の口頭弁論期日は12月13日(火)15時半開廷。ぜひ多数のご参集を! 

「絵に描いた餅の避難計画」と 四電に再反論  薦田伸夫弁護士

 薦田伸夫弁護士は準備書面(99)で、「あまりにもひどい被告四電側の反論に再反論する」として、「福島原発事故に学ぶこともなく未だに安全対策を軽視している」、「第5層(放射性物質の放出の影響緩和を目的とし、原発施設外の緊急時対応をすべきとする国際基準)が不備のままであり、住民の命、身体、財産は守れないので原発の運転は認められない」、「人格権に基づく運転差止の要件について、判例を誤用して独善的な主張をしている」、「伊方原発の避難計画は複合災害を想定しておらず、本質的・致命的欠陥がある」、などと被告四電の主張への再反論を展開。そして「避難計画の不備についての原告の主張を論難(不正や誤りを論じ立てて非難攻撃すること)しているが、いずれも核心を外した論難に過ぎず、再反論をする内容でない」と断罪した。

準備書面(99)避難計画の不備についての再反論

薦田伸夫弁護団長 報告集会にて

火山新・旧火山ガイド策定の過程など補足説明 東翔弁護士

 東翔弁護士はスライドを用いて、火山についての準備書面(98)、(100)について補足説明。冒頭で「火山に関しては、噴火の予測は困難という原告らの主張こそ支配的・通説的な見解であり、被告の採用する考えは、被告独自の見解か、せいぜい一部の研究者らによる仮説に過ぎない」として、司法が原発の高度な安全が確保されるように線引きをするべきで、「この選択を行政庁の裁量とするのは安全確保(権利侵害防止)についての司法の責任を放棄するのに等しい」として司法による判断を求めた。

 原発の安全対策指針となる「火山影響評価ガイド」には2013年の「旧火山ガイド」と2019年の「新火山ガイド」があるが、これらは、いずれも火山学の専門家の見解を無視して策定されていることを明らかにした。火山学者の見解とは「完全には噴火予測ができず、噴火が切迫しているか否かも今後の課題であり、火砕流が来そうなところには原発を作らないのが基本だ」「大規模噴火を想定外として目をつぶることは火山学として許されない」。

準備書面98(火山11)

準備書面(100)火山  準備書面(100)の訂正申立書

原告二人の意見陳述

今の子ども達が大人になる前に「原発をやめた町」を手渡したい(清水あやこさん) 

 伊方町在住の清水あや子さんは、小学校時代に伊方町で暮らし、その後、今治市に転居するも、1年程前に帰郷。伊方原発1号機の建設が始まった小学校6年生のころには、科学の最先端技術の施設が地元に建設されることに期待や誇らしい気持ちがあった。ところがスリーマイル島やチェルノブイリ、福島原発事故を経験して、「原発を無くすことで原発事故は防げる」と確信するに至る。50年後に戻った伊方町は、原発頼みで経済は先細り人口も減り続けている。原発事故が起きても住民を安全に迅速に全員避難させることができない。一日も早く自然エネルギーへの転換を図ることこそ四電の進むべきではないか、人間の手に負えない原発を次の世代に押し付けてはならないと訴えた。

220929清水あや子さん意見陳述

福島原発事故をきっかけに愛媛に移住して(関根律之さん)

 内子町在住の関根律之さんは、千葉県船橋市で有機食品などを販売する会社に勤務していたが、3・11後に家族で愛媛に移住することを決断。本訴訟の第2次原告となる。現在は町議として2期目を迎え、原木シイタケ生産にも従事。内子町の一部が伊方原発の30㎞圏域(UPZ)にかかることから住民避難計画が策定されている。が、巨大地震で道路や通信などのインフラが傷んでいる状態で過酷事故が起きれば、避難計画に実効性があるとは思えない。リスクのある原発を動かすこと、行き場のない核のゴミを増やし続けることは無責任で許されることではない。脱炭素社会のエネルギーの主役を原発から再生可能エネルギーに転換し、将来世代に負の遺産ではなく、豊かな環境を残すことこそ私たちの責務だと訴えた。

220929関根律之さん意見陳述

閉廷後 R2番町ビルで記者会見・報告集会を開催

記者会見・報告集会 

この裁判体で判決をと弁護団

 中川創太弁護士:この裁判体に判決を書いてもらうつもりで立証の準備もできつつある。今日も原告から血の通った肉声が聞けた。「証人尋問についてのアウトラインを知りたい」とのメディアからの質問については、原告には「原発の危険性」、専門家には「地震動、避難問題、過酷事故」について証人尋問したいと考えている。必要な証人は全て出すつもり。来年3月頃には立証計画を立て1年前後の期間で集中的に証人尋問に取り組みたいと考えている。

 薦田伸夫弁護士:原告らの意見陳述は素晴らしかった。準備書面(99)について14~15頁にある市立八幡浜総合病院の越智元郎医師による報告「愛媛県災害医療コーディネーターとして」や、17頁の四電の「不備であっても改善されているのだから不備というな」と言わんばかりのひどい主張に目を通してほしい。証人尋問が始まると、審理が午前・午後と長くなるが、ここが勝負時だ。傍聴席を原告・支援者で埋め尽くしてほしい。

 定者吉人弁護士:この裁判の代理人を引き受ける時に、今やるしかないと思った。その気持ちを持ち続けるのは大変だったが、広島から松山に来て原告らの意見陳述を聞くたびに勇気をもらっている。

原告の感想:清水さん「緊張で手が震えた」、関根さん「原発訴訟の現場に感動した」

清水さん:意見陳述にとても緊張して、読み上げながらも手が震えていた。子どもの頃の原発が怖いというより最先端の施設が来ることにワクワクした気持ちを思い出したが、今日の陳述がみなさんに説得力があったかと心配。

関根さん:原発事故については、時間の経過とともに情熱が薄れていた。陳述の依頼を受けて改めて原発問題を勉強しなおした。今日、初めて裁判の現場を見て、感激している。支援している人々の姿にも感動した。風化していく脱原発の雰囲気を押しとどめたい。改めて再生可能エネルギーに未来ありだと思った。

会場からも発言が

 「8月24日の岸田発言を契機に国は急テンポで原発回帰政策に戻っている。改めて、多くの人に脱原発を呼びかけなくてはと思う」、「関根さんの言われる、3・11から記憶が薄れていく、との言葉に感じるものがあった。それぞれの場で人とつながり続けて脱原発を訴えましょう」、「高知でも『まもろう平和 なくそう原発in こうち』を11月に企画している。参加者が少なくなりつつある中で巻き返しを図っている」

10月20日提訴日には松山地裁に多くの原告・支援者のご参加を!

 松浦事務局次長より第6次原告募集の経過が報告され、9月22日で当初目標の50名を超え、現在、70名となったこと、また10月10日まで締切を延長したので、更なる応募を、との呼びかけがあった。10月20日13時に訴状提出、14時からR2番町ビルで薦田弁護団長による記念講演「伊方原発訴訟の現在」が予定されている。新原告だけでなく支援の皆さんも多数ご参集をと要請があった。最後に須藤昭男事務局長の挨拶で報告集会を終了した。

次回、第31回口頭弁論12月13日15時半開廷 大結集を!

 伊方訴訟10年のなかで、前回と今回のみ、原告席、傍聴席にいくつかの空席が見られた。コロナ禍が影響しているかとも思われるが、政権の原発回帰が現実化しているなかだからこそ、みなさんの結集を是非にお願いしたい。次回12月13日(火)15時半開廷の第31回口頭弁論には多くの原告・支援者のご参集を!