第34回口頭弁論の報告 

避難計画は実効性に欠ける 環境経済学者・上岡直見さんの証言

 5月23日(火)、松山地裁で第34回口頭弁論が行われた。

 原告席には、原告代理人の薦田伸夫弁護団長、中川創太弁護団事務局長、高田義之弁護士、今川正章弁護士、東翔弁護士、そして東京から駆け付けた大河陽子弁護士が並び、その後ろに須藤昭男事務局長をはじめ19人の原告も入廷。一般傍聴席(36席)には113人の希望者があり、久しぶりに裁判所ロビーには熱気が戻った。

当日の資料のODFです。上岡証人によるスライド資料を見ることが出来ます。

 230523第34回口頭弁論資料(軽量版)

 13時半から16時過ぎまで第31号法廷で、「原発避難計画の検証」の著者である上岡直見さん(環境経済研究所代表)が証言台に立った。大河弁護士がスライドに映し出された図や表を使って主尋問(90分)を行い、その後20分の休憩を挟んで、被告四国電力側・田代弁護士からの反対尋問(60分)が行われた。主任裁判官からの補充尋問もあった。

 上岡証人は、県の避難計画は、複合災害を想定しておらず、佐田岬半島の先端側にも数千人の住民が居住するという地形の特殊性も考慮されていない等として、実効性の保証が担保されていない、また住民の視点を入れての検証もされていない熟度やレベルが低い避難計画であると証言した。その例として、県の避難計画通りに行動できたとしても、避難元の八幡浜市や大洲市から避難先の松山市への移動を通して、一般公衆の年間被ばく限度(上限1ミリシーベルト)をはるかに超える約300ミリシーベルトの被ばくがおこると証言した。

 被告側反対尋問では、「災害対策基本法では減災の考え方を基本としていて、完全無欠な計画は実現困難だが、どう考えるか」との質問に対して、上岡証人は、自然災害は人間には止められないので減災の考え方をするが、原発事故は原発がなければ起ることはないと指摘し、自然災害と同様の解釈はできないときっぱりと証言。被告側の反対尋問は、証人の知識や経験、信頼性を失わせようとする類の「~は知っているか」調の尋問が多く、これに対して上岡証人はことごとく冷静沈着に揺るぎない証言を貫いた。

 閉廷後は、報告会に代わって簡単に締め括りを行った。

 第35回口頭弁論、6月20日(火)、第36回口頭弁論8月22日(火)とも、10時から午後5時まで終日行われる予定。 

「締め括り」で挨拶する大河陽子弁護士と上岡直見証人
裁判所脇での締め括り風景
締め括りの挨拶を聞く原告・支援者ら