図表を用いて火山の危険性を指摘

第22回口頭弁論の報告

 7月9日、伊方原発運転差止を求める裁判の第22回口頭弁論が、松山地裁で行われました。この日のメインは、前回に引き続いて火山の危険性をめぐるプレゼンでした。

伊方原発はとめたまま廃炉に!

火砕流の到達や火山灰による危険を指摘

 中野宏典弁護士(山梨県弁護士会)は、緻密で膨大な準備書面77及び78を事前に提出し、それらの解説版として模型図やグラフなどを織り込んだ準備書面79も併せて提出した上で、法廷内に設置したモニターを活用して約30分のプレゼンを行いました。

準備書面77(火山その4)

準備書面78(火山その5)

準備書面79

 主要な論点は二つです。一つは、火山の危険性に関わる四国電力の主張が、非科学的でデタラメであることの解明、もう一つは仮に四国電力の主張が科学的に妥当とみなせた場合の法的判断の在り方にかかわる主張です。

 前者について、「火砕流は伊方原発まで到達する危険は皆無」「飛散する火山灰も原発稼働を妨げない」との四電の主張に、中野弁護士は火山学の専門家の諸論文にもとづいて阿蘇4火砕流の堆積物が到達している可能性があることを指摘しました。また、噴火規模が阿蘇4噴火に至らない程度の、より頻度の大きい噴火発生の歴史を踏まえて、原子力規制委員会の火山ガイド(基準)自体の不合理性も指摘しました。さらに、火山灰の粒の大きさや濃度に関わる四電の試算の誤魔化しを具体的に解明。火山灰の濃度は、吸気口の目詰まりなどによる原発稼働の不可能性に直結していることから、四電の誤魔化しを暴露したのです。

「専門家の対立」下では、より安全な法的判断を

 後者については、中野弁護士は「科学の不定性」という形で提起しました。すなわち、専門家の見解に対立がある場合、どちらが科学的に正しいかの判断を裁判所に求めている訳でなく(それは科学の分野で時間をかけて検討・精査されやがて確立される)、裁判所に求められるのは法的判断であると主張しました。そして、本年1月の広島高裁決定(森一岳裁判長)を引用し、「福島原発のような過酷事故は絶対に起こさないという意味での高度な安全性」の理念を踏まえた判断をすること、すなわち、より安全を担保する見解を裁判所は採用すべきで、それこそが法的判断として裁判所に課せられた責務だと訴えました。

 なお、この日は地震の震源地でもある中央構造線に関わる準備書面76も提出し、薦田伸夫弁護団長は短時間に口頭でその概要を陳述。伊方原発1号機の建設時にはその存在さえ無視した四国電力は、基準地震動を僅か200ガルで建設した歴史などを振り返えりつつ、音波探査の限界と四電の主張のいかさまぶりを解明し、地震の危険性を重ねて指摘しました。

準備書面76 中央構造線についての反論

 その後に西条市丹原町の原告・西川則孝さんは、有機農業家の立場から事故がなくても原発が環境破壊を引き起こしている事実をあげて、原発の運転停止を求める意見陳述をしました。

200709西川則孝さん陳述書

コロナ禍で入廷原告も傍聴者も大幅抑制に

 この日の法廷は、原告席12名、傍聴者13名で開かれました。従来は原告と弁護士で30名が入廷し傍聴者は36名でしたが、コロナ感染対策を理由に裁判所が定めたものです。その意向を事前に伝えられた弁護団も原告団も意見書を出すなどして、そうした抑制を改めるよう求めましたが、裁判所の考えを改めさせることが出来ませんでした。

報告集会で火山のプレゼンを再現

 閉廷後にR2ビルに移動し、記者会見と報告集会を行いました。コロナ対策としてまばらに机・椅子を配置した会場で、マスコミの質問に応えた後に、中野弁護士による火山のプレゼンを再現し、質疑の後に須藤昭男原告共同代表の閉会の挨拶で散会しました。

 なお、次回の口頭弁論期日は10月6日(火)14時30分です。