伊方原発運転差止訴訟 第29回口頭弁論・報告会

口頭弁論も29回を数えるなか、粛々と裁判所に向かう原告と支援者ら

福島事原発故後の司法判断を問う 数年振りに原告席ひしめきあい 

 6月21日、松山地方裁判所31号法廷にて第29回口頭弁論が行われ、コロナによる席数抑制の撤廃で、原告席に30名が入廷しました。

弁護団から「弁論更新に際しての意見書」

因縁の法廷で 日本の原発裁判の経緯を振り返る

 中川創太弁護団事務局長は、31号法廷が日本初の原発訴訟の「伊方原発1号炉訴訟」が行われた場所であることを指摘した上で、新任の3裁判官らに渾身の意見陳述を行いました。

 その時の最高裁判決は原告住民を敗訴させたものの、「原子力災害が万が一にも起こらないように規制されるべき」と判示したと述べ、それでも福島事故の発生を防げなかった司法の責務を問いました。

 また、その後の原発訴訟で住民敗訴の判決を下した裁判長らの福島事故後の率直な反省の弁を紹介しました。その上で新裁判体に対し、原発事故を二度と繰り返さぬとの決意のもとでの審理を、また「原子力災害が万が一にも起こらないようにする」との原則に基づく安全対策が講じられているか否かを判断することを強く求めつつ、この裁判体で判決を出すことを要請しました。 

    220621弁論更新に際しての意見書

法廷での弁論更新について報告する中川弁護団事務局長

原告2人の意見陳述

福島出身の原告共同代表の叫び 福島を愛媛で繰り返してはならぬ

 会津出身の須藤昭男さんは50年前に教会設立のために牧師として松山に赴任し、原発に違和感もなく暮らしていましたが、3・11の福島原発事故に衝撃を受け、「伊方原発をとめる会」の設立に参加。2016年の3号機運転差止仮処分申請でも共同代表になり、故郷・福島の原発事故を見たからには何を犠牲にしても福島の悲惨な事故を繰り返してはならないと考えていると訴えました。3・11後に何度も現地に足を運んで聴き取った、知人たちの悲痛な訴えを裁判官に伝えるとともに、事故後の福島で起きていることを知るにつれ「福島を繰り返すな」の想いが更に強まっているとも述べました。「伊方原発3号機はプルサーマル。伊方には活断層がある。一刻も早くとめなければならない」として、裁判長に「生きた司法判断を切にお願いする」と力強く訴えました。

   220621須藤昭男さん意見陳述書 

報告集会で意見陳述の感想を述べる須藤事務局長

第一次伊方訴訟の原告団長の言葉に打たれ、また福祉施設を預かる立場から 伊方原発の廃炉を訴える

 大野恭子さんは、1980年代のチェルノブイリ原発事故や伊方原発2号炉の出力調整実験に衝撃を受けて、第1次伊方原発訴訟の傍聴に通う中で、原告団長の廣野房一さん(故人)の「子孫に禍を残してはいけない」との言葉に打たれ、伊方原発の廃炉を訴え続けてきた経緯を述べました。

 また、障がい者支援施設の理事長として、2018年7月の西日本豪雨の際に入所者を緊急避難させた実体験に基づいて、障がい者の避難は困難を極めると訴えました。伊方原発に過酷事故が起これば、松山市は福島事故で全住民避難となった飯館村と同じ50㎞にあるにもかかわらず、松山市民の避難を全く想定せず、30㎞圏内の避難者を受け入れる義務を負わされていると語り、「伊方原発過酷事故前夜にいる」私たちが「原発のない社会」をつくっていくために、「司法は未来を守り人権を守る最後の砦」であって欲しいと訴えました。

   220621大野恭子さん意見陳述書

法廷での意見陳述の感想を述べる大野恭子さん

記者会見・報告集会

左から定者吉人弁護士、大野恭子さん、中川弁護士、薦田弁護士、須藤事務局長

「この裁判体で判決を」と弁護団 

この裁判体に判決を書いてもらうべく全力投球すると薦田弁護団長

 閉廷後の記者会見では、薦田伸夫弁護団長から今回の裁判体に判決を書いてもらうべく弁護団も全力投球でいくとの決意が語られました。中川創太弁護士からは法廷での弁論更新の概略が述べられました。また、両弁護士から、本日の傍聴席に空席が見られたため、次回以降は傍聴席を支援者で埋め尽くす努力をして欲しいとの要望がありました。原告意見陳述をした須藤昭男さん、大野恭子さんは、法廷での感想とともに伊方原発の廃炉を求めていく決意を熱く語りました。

強雨を押して報告集会に集まった参加者

 記者からの質問で、5月の札幌地裁泊原発差止訴訟の住民勝訴、6月の避難者裁判最高裁判決(国の責任を否定)の伊方訴訟への影響を問われた薦田弁護士は、直接的な影響はともかくとして、最高裁の三浦守判事の反対意見は今の法制を踏まえて多数意見をあらゆる点で論破していると評価しました。また、別の記者から津波対策や避難計画について問われると、伊方原発は5000人が避難困難となる日本で最悪の原発なので、そのことも主張・立証していくと答えました。

 会場からの「6月28日に四電の株主総会があるが、効果的な発言は?」との問いに対して、国は責任を負わないとの先日の最高裁判決を踏まえて、中川弁護士から「事故が起きたら四電だけで被害者への賠償金はいくら払えるのかと聞いたら、いかが」と、タイムリーな助言がありました。

 次回、第30回口頭弁論期日は、9月29日(木)14:30開廷です。伊方廃炉を求める私たちの力を世に示す絶好の機会です。是非とも松山地裁にご参集ください。