緊急報告:高松高裁抗告審 原発稼働を容認  

運転停止の申立を棄却

伊方3号機の運転差止仮処分の即時抗告審に対して、11月15日(木)11時に高松高裁にて決定書が交付され 「本件各抗告をいずれも棄却する」との不当決定がなされた。

181115-伊方3号炉運転差止仮処分即時抗告審決定要旨

なお、「決定」の正本は、脱原発弁護団全国連絡会のホームページに掲載されていま
す。http://www.datsugenpatsu.org/bengodan/news/18-11-15/

この不当決定に対して、「伊方原発をとめる弁護団・伊方原発をとめる会は」ただちに以下の声明を発表。

181115 声明(高松高裁即時抗告審決定)ver2

2018年11月15日

伊方3号炉高松高裁即時抗告審決定についての声明

伊方原発をとめる弁護団

伊方原発をとめる会

1 本日,高松高等裁判所第2部(神山隆一裁判長,千賀卓郎裁判官,横地大輔裁判官)は,伊方原発3号炉運転差止仮処分申立事件の即時抗告審において,棄却決定をした(以下「本決定」という)。

2 本決定は,①新規制基準と原子力規制委員会の基準適合性判断に不合理な点がないことを電力会社が主張・疎明すれば抗告人らの生命等に被害を与える具体的危険性が存在しない。②基準地震動に関する新規制基準の定めに不合理な点はなく,四国電力が行った基準地震動の策定は地震ガイドに沿うもので相当である。③広島高裁抗告審決定を受けて原子力規制庁が作成した「巨大噴火に関する基本的な考え方」は社会通念にも合致して合理性があるとした上,火山ガイドは「基本的な考え方」を踏まえて解釈適用する以上は合理性がある。④避難計画については,これが存在しないかまたは存在しないと同視し得るような場合でなければ,人格権に対する違法な侵害行為にあたるということはできないとして,避難計画が不十分であることを認めながら,人格権侵害のおそれがあるとまではいえない等として,抗告人らの抗告を棄却したものであって,到底容認できるものではない。本決定は,市町村,都道府県及び国において早急に周辺住民の避難対策に万全を期すべきであると付記しているが,これは単なるリップサービスにとどまらず,裁判官の責任転嫁以外の何物でも無い。

3 本決定は,司法審査の在り方について,原発事故被害の異質性(不可逆甚大性,広範囲性,長期継続性など),他の科学技術の利用に伴う事故とは質的に異なることを認めながら,およそあらゆる自然災害についてその発生可能性がゼロないし限りなくゼロに近くならない限り安全確保の上でこれを想定すべきであるという社会通念が確立されているとはいえないとして高度な安全性が確保されるべきことを否定した。しかし,この間の伊方原発差止仮処分の中でも明らかになりつつあるように,「社会通念」とは裁判官の恣意的な感覚にすぎず,真に国民の意識を反映したものではない。多くの世論調査で,原発の安全性について不安視する声が6割を超えるような状況の中で,裁判官の恣意的な感覚で安全性の低い原発の稼働を容認することは絶対に許されない。

4 基準地震動に関し,抗告審において,岡村眞高知大学名誉教授と長沢啓行大阪府立大学名誉教授の参考人審尋が行われたが,本決定は,両教授ら専門家の貴重な供述をないがしろにし,四国電力の主張をコピペしたような理由付けで,基準地震動策定の合理性を認めてしまった。専門家の良心に基づく警鐘に耳を塞いでしまったもので,その誤りはきわめて重大である。

5 本決定は,火山事象に関する安全性について,原子力規制庁が今年3月7日に公表したいわゆる「巨大噴火に関する基本的な考え方」に依拠し,火山ガイドは「基本的な考え方」の内容を踏まえれば不合理とはいえないとして,巨大噴火のリスクは社会通念上無視し得るものとした。しかし,そのような社会通念が裁判官個人の恣意的なものであることは先に述べたとおりであるし,原子力基本法には,原発の安全は確立された国際的な基準も踏まえて判断するとされているところ,巨大噴火を無視してよいなどという国際的な基準は存在しない。本決定は,原子力基本法に反する違法な決定というほかない。また,本決定は,巨大噴火に至らない規模の噴火,したがって本来は社会通念上無視できない噴火によって四国電力の想定を超える火山灰が到達する可能性が十分小さいとは言い難いことを認めながら,ここでも「基本的な考え方」に盲従して,巨大噴火が直ちに発生することについて相応の根拠をもって示されない限り,巨大噴火に至らない規模の噴火も無視してよいと結論付けている。しかし,これはあまりにも没論理で,行政に迎合した判断であり,もはや国民の人権を守るという裁判所の役割を放棄した判断というほかない。裁判所は,司法に対する国民の信頼の源泉であるところの,論理も正義も放棄してひたすら行政に迎合するだけの存在に,自ら堕したというべきである。

6 本決定は,行政機関の判断に追随する判示を繰り返し,司法として原発の安全性を独自に判断する責務を放棄したものであって,福島第一原発事故以前の行政機関追随の司法に立ち戻ったものと評さざるを得ない。伊方原発以西の佐田岬半島には,現在も5000名を超える住民が居住しており,伊方原発は避難が困難な地形に立地し,住民らの避難計画が不十分であることは,本決定も認めているところであるが,それにもかかわらず裁判所が伊方原発3号炉の稼働停止を認めないのは,これら住民の命を見捨てたに等しいものである。伊方原発3号炉の稼働に正当性がないことは,今回の決定からも明らかであり,我々は,伊方原発3号炉が廃炉となる日まで,今後も闘いを続けていく。

以上