弁護士・研究者有志による愛媛県への申し入れ

 去る2月17日、県内の弁護士有志と研究者有志14名が、県知事と伊方原発環境安全管理委員会、および同原子力安全専門部会長にあてて申し入れを行いました。原発の運転差止裁判にかかわっておられない弁護士と、幅広い分野の研究者有志によるものです。関係者の了解を得て掲載させていただきます。(写真は2020/2/17県庁記者クラブにて)

中村知事は、相次ぐ伊方原発の深刻なトラブルについて、「一連の問題を県伊方原発環境安全管理委員会で公開審議する考えも示した」(1月28日愛媛新聞記事)と報じられました。しかし、2月18日の同委員会専門部会では申し入れの事実も報告されず、検討もされていません。県民の声が届く運営が行われるべきです。

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申 入 書

2020年2月17日

愛媛県
知事 中村時広 様
伊方原子力発電所環境安全管理委員会
会長 神野一仁 様
同環境安全管理委員会原子力安全専門部会
部会長 望月輝一 様

愛媛弁護士会有志_____
弁護士 井上 雄基___
弁護士 臼井 満____
弁護士 武井奈保子___
弁護士 西嶋 吉光___
弁護士 野垣 康之___
弁護士 水口 晃____
愛媛県内研究者有志____
泉 英二(森林政策学)_
川岡 勉(歴史学)___
小淵 港(経済学)___
清野 良榮(経済学)__
松尾 博史(ドイツ文学)
光藤 昇 (経済統計学)_
村田 武 (農業経済学)_
山本万喜雄 (健康教育学)

 伊方原発3号炉では,本年1月以来,保安規定からの逸脱が発覚したり(1月7日),制御棒を誤って引き抜いたり(1月12日),燃料集合体をラック枠に乗り上げたり(1月20日),ついには全交流電源を喪失するなど(1月25日),短期間に重大なトラブルが頻発しました。これは,大変異常な事態であり,1月29日付の知事メッセージ「伊方発電所異常事象に関する四国電力社長からの報告について」にあります通り,県民の「不安と不信感はかつてないほど高まって」います。中村知事が,このトラブルを重大な問題と受け止め,四国電力に対して「トラブル発生の原因を徹底的に究明し,再発防止策をしっかり検討するとともに,(中略)伊方発電所の安全対策を総括的に検討すること」を「強く要請」されていることは,まさに県民の意に沿った対処だと考えます。

 2月10日,2月18日に伊方原子力発電所環境安全管理委員会原子力安全専門部会が開催される旨通知されましたが,同部会においては,四国電力の報告を聴取されるだけでなく,事象の原因がきちんと究明され,再発防止策が具体的にとられているのか,厳しくご検討されることと思います。「1件の重大事故の背後には,重大事故に至らなかった29件の軽微な事故が隠れており,さらにその背後には事故寸前だった300件の異常,その背景には多数の潜在危険」があるというハインリッヒの法則に鑑みても,今回のトラブルを看過しないことが,重大事故を防ぎ,愛媛県民の生命や健康を守ることにつながると信じます。

 さらに,知事のメッセージにあります通り,このトラブルを教訓として,「伊方発電所の安全対策を総括的に検討する」ために,愛媛県及び伊方原子力発電所環境安全管理委員会におかれましては、当事者である四国電力以外の専門家の意見を聞かれた上で,愛媛県民の生命や健康を重視する判断を下していただきたく存じます。
ついては、次の3点の実現を申し入れます。

(1)相次ぐトラブルを重大事故の前兆ととらえ、これらを看過しないことを、県並びに伊方発電所環境安全管理委員会と専門部会の基本姿勢として堅持してください。

(2)本年1月17日の広島高裁決定が指摘した活断層・地震と火山の問題,重要な探査に用いられる三次元物理探査が伊方原発のある佐田岬半島の海陸部で行われていない問題について原子力安全専門部会の議題とし,慎重かつ厳格な検討を行ってください。

(3)四国電力の報告を聞くだけではなく,上記,地震・火山・地盤の問題について外部専門家の意見を十分に聴取したうえで,伊方3号炉の定期点検の再開を認めるかどうか慎重かつ厳格に検討してください。